ドラムステーション

Bad Gear - Drum Station

この回の結論

デジタルでノイジー、クローンがカッコよかった時代の実用一辺倒な形。インスタ映えも synth グループでの社会的信用スコアも上げてくれない。それでも欠点だらけなのに結構好きだ、と認めている。スイートスポットが広く、音が音楽的でミックスに馴染む。ワークフローはもたつくが、スタジオでもライブでも使う気になる。

何を喋っているか

  1. 古いハードディスクの中に懐かしいミームを探しに行ったら、忘れられた機材を扱った『失われた Bad Gear の回』が出てきた、という設定で始まる。「俺は1日も歳を取ってない」。
  2. 「世界で最も嫌われているオーディオツールを扱う番組、Bad Gear へようこそ」。今の時代、音楽制作にモノは要らなくなったはずなのに、モノを積み上げることが以前にも増して重要になっているようだ、と皮肉る。今日は Novation Drum Station。今どきのシンセ・クローンはほぼホームスタジオの飾りだが、この1996年のドラムマシン——TR-808と909の恥知らずなパクリ——は、あの象徴的なドラム音を実際にイジれる、ほぼ唯一の手頃な手段だった。単純な時代だった。
  3. 見た目は完全に業務用ラック。「19インチ機材を TikTok でカッコよく見せる方法を知ってたらコメントで教えてくれ」。シーケンサーが1つ、グルーヴィな808キットと、そこそこパンチのある909の音を出してくれる。
  4. パラメーターをイジるためのノブがそれなりの数ある。「Roland がまだ気にしてた頃なのに、驚いたことに訴訟にはならなかった」。ただし最も重要な音である808のカウベルが、クラップやリムショットと操作を共有してしまっている。
  5. 両方のキットが同時に使えるにもかかわらず、いくつか妥協が必要だった点を指摘。MIDI と音程を付けた演奏は当時としてはかなり早い時期から可能だった。鳴らしている音によって、よく分からないポリフォニーの上限がある。
  6. ほぼアナログの本家TRと違って Drum Station は完全デジタル。90年代のマーケティング用語を抜きにすると、これはかなりロンプラー(サンプル再生)寄りだという状況証拠が揃っている。位相反転テストをすると、合成しているはずの成分が正確に打ち消し合いすぎる。フロントカットでドラムの頭を削れる。
  7. 808スネアのピッチなど、本家に無いパラメーターが足されているのはありがたい。「Novation のインターフェースはいつだって歓迎だが、極小ディスプレイのミニマルな“ヴィンテージ・メニュー荒野”はそうでもない」。キット全体の呼び出しは快適だが、あまりに古臭いプログラム書き込み手順は説明書を読まないと分からなかった。想定より長くユーティリティ・メニューに滞在する羽目になる。
  8. 内蔵のディストーションは今のハードテクノにもよく合う。ベロシティによるモジュレーションが意外と深く、往年のTRのアクセントを再現するには十分。パンのパラメーターから、この機械の最大の武器であるマルチアウトの話につながる。
  9. そしてここで、無視できない厄介な癖が顔を出す。Drum Station はノイズがひどいことで有名。粗悪な純正電源のせいだとよく言われるが、同スペックの個体に替えても「2000年代初頭のハノイ市街のエアコンみたいなノイズフロア」は消せなかった。トランスを足してもプリアンプを変えても大して改善しない。
  10. 音を追い込むのにオーディション機能とオートトリガーが便利。Din Sync 出力が付いているのも良いし、内蔵デモは可愛らしい。見た目の違い以外に、バージョン1・2・D Station の差については決定的な情報を見つけられていない。
  11. 今の中古相場を考えると、中古の TR-8 や「ウーリー印の最高傑作(=Behringer)」と比べたら、売り込むのは正直つらい。19インチラックと初期グルーヴボックスと Atari の世界では、Drum Station は完全にイジれるTRの音をセットアップに組み込む最も現実的な方法だった。SNS駆動のダンスミュージックの現在に、まだ居場所はあるのか。
  12. 今回のイントロ曲でもう聴いてもらっている。このミニマルなバージョンはもう定番として認められたのか。808側が本家についていけるのかを知りたい、と実演へ。
  13. 「これは驚くほど良かった」。ゲイン設定はノイズフロアと内部クリップの間の綱渡りだと認めつつ、まともにミックスしなくても音がアレンジに収まる。マルチアウトを試し、内蔵ディストーションをかけ、時代考証的に正しいシンセを足していく。
  14. こちらも悪くない。歪ませてもパンチが残る。
  15. ミックスに埋もれてしまえば、コンプで上がったノイズフロアも聞こえない。UIは広いのに、Drum Station は「1機能1ノブ」からは程遠く、間違ったパラメーターばかりイジっていた。長めの音作りに入った結果、「あと何音足せばミニマルに聞こえなくなるんだ」と自問することに。809 celebration。
  16. 結論。Drum Station はデジタルでノイジー、クローンがカッコよかった時代の実用一辺倒な形。「インスタ映えも、オンラインのシンセ・グループでの社会的信用スコアも、まず上げてくれない」。それでも欠点だらけなのに結構好きだと認めている。スイートスポットが広く、音が音楽的でミックスに馴染む。
  17. ワークフローはもたつくが、スタジオでもライブでも使う気になる。もっと現代的な選択肢が多くの面で優れているのは間違いない。ただ、「Drum Station みたいな機材は、人が実際に聴いた音楽を作るのに使われていた可能性が高い」と締める。