それではもう通用しない

Bad Gear - THAT doesn't CUT IT anymore!!!

この回の結論

画面を持たない UI は、初代や Tracks の削ぎ落とされたドラムやマイクロシンセには良くても、ループを扱うのには向いていない。タイムストレッチのような必須機能が無く、モノラル・モノフォニックの再生とファイルサイズ制限は「2010年代すぎる」。他の Circuit との併用なら良い補完になるが、中古の MPC One / 初代 Digitakt / Electribe 2 / OP-Z が手頃な今、特に新品で買うのは売り込みづらい。ただし Tracks・Rhythm・Monostation を1台にまとめた「でかくて太い Novation のグルーヴボックス」になら、2026年の魂を砕く高騰価格でも喜んで払う。小さくていいから画面は欲しいが。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われているオーディオツールを扱う番組、Bad Gear へようこそ」。ほんの数年前までは、箱に入っただけの凡庸なプラグイン、生煮えのハンダ付け実験、企業が持て余した知的財産の焼き直し——そのどれもが興味を持って迎えられ、メディアイベントに仕立てられ、暇と可処分所得の両方を持つ人々のコレクションに加えられていった、と皮肉る。
  2. その時代の「ほぼ役に立たないミーム機材」の極みが、2021年の Circuit Rhythm。初代 Circuit の大成功のあと、Novation は少し怠けて、ほぼ同一の Tracks を出し、本来入るはずだった細かな改良を全部また別の定価のグルーヴボックスに詰め込んだ。「それではもう通用しない」。灰色の配色は、これから積もる厚い埃を先取りしていたのかもしれないが、それ以外は洗練された意匠が兄弟機と同一。
  3. 4×8のパッド行列がしばしば謎めいた表示部を兼ね、8本のサンプルトラックにアクセスできる。Tracks と違い、音を音階で鳴らせる。
  4. ワンショット、ゲート、ループ、ループ、ループ、ループ、そしてループ、といった再生モード(同じ言葉を繰り返して機能の少なさを茶化す)。速度の同期もできる。スライスは、素朴な UI のわりに驚くほどうまく機能する。
  5. この機種の主な売りの一つがサンプリングとサンプル編集。ただし後者は画面を持たない設計ゆえ、慣れが要る味わい。1つのマシンステートあたり228秒、1パッドあたり32秒という制限の中で録り終えると、モノフォニックの再生エンジンにはハイパスと、
  6. やや樹脂っぽく鳴るレゾナンス付きローパスがある。歪みと、音量用のマクロ・エンベロープ。「それで全部」。フィルター・エンベロープも、把握している限りリアルタイムのストレッチも無く、LFO は1基も入っていない。「哀れだ」。
  7. それでも歴戦の Circuit 使いは音階でのサンプル再生を喜ぶだろうが、残念ながら「あまり邪悪でない方の双子」にあるスケール機能が無い。受容の段階に入ると、アイデアは例のトラックあたり4パターン・最大32ステップのシーケンサーに落ち着く。外部 MIDI 制御にはトラックを1本潰す必要がある。
  8. サンプルフリップは可能性をかなり広げる。クオンタイズしない録音、マイクロタイミング、確率、ミューテート、オートメーションもある。
  9. リバーブ、ディレイ、マスターコンプという平凡な道具で仕上げられるが、グリッド・エフェクトを見つけると面白くなる。ビートリピートによるループの解体などのパフォーマンス系エフェクトは外部入力にもかけられる。「古典的なマスターフィルターは大好きだ」。Novation の(鼻を鳴らして)Components というウェブ画面は UI の制約を回避させてくれるが、サンプルの読み込みは長かった。
  10. 複数のマシンステート(パックと呼ぶ)を SD カードに保存できるのは良い配慮。背面は、歩行器と同じ値段で中古市場に転がっている小型グルーヴボックスとしては模範的。「Novation は Circuit 2 に入ると期待されていた追加機能を全部取り出して、別売りにするという商売を選んだ」。激変した音楽機材の生態系の中で、今なお買う価値はあるのか。
  11. 今回のイントロ曲でもう聴いてもらっている。サンプラーを工場出荷時の音で判断すべきではないが、この機械がどれだけ説明不要で扱えるのかを知りたい、と実演へ。
  12. 「音的にはまだ少し粗かった」。ただ、説明書を開かずにジャムを始められるのは楽。昔と同じで、汚れはいくらでも出せる。フィルターはあまり好みではない。次はレベルを控えめにして、「働いていない愉快な叔父さん」(=もう1台の Circuit)と組ませ、お約束のドラムブレイクをサンプリングする。
  13. 2本目のジャム。
  14. 「おそらくメーカーはこう使わせたかったのだろう」。標準の Circuit に重い仕事をさせて、Rhythm でサンプルを足す。ただ、この完璧な企業的世界においてすら、ループの扱いは古臭く、古い MPC にすら劣る。他の Circuit の削ぎ落とされた設計は好きだが、Rhythm では創作の流れを保つのに苦労した。
  15. 「さっさと終わらせて、作り込みすぎたメタ・トラップの、歴史的に正確なアンデッドの残骸の周りで踊ろう」と3本目へ。
  16. 結論。「お気づきかもしれないが、Circuit Rhythm はあまり好きではない」。画面を持たない設計は、初代や Tracks の削ぎ落とされたドラムやマイクロシンセには最高でも、ループの管理には向かない。タイムストレッチのような必須機能が無く、モノラル・モノフォニックの再生と厳しいファイルサイズ制限は「私の趣味には2010年代すぎる」。
  17. 他の Circuit をうまく補完するのは確かだが、中古の MPC One、初代 Digitakt、Electribe 2、OP-Z が手頃な今、Rhythm は売り込みづらい。特に新品で買うなら。ただし Tracks・Rhythm・Monostation を1台にまとめた「でかくて太い Novation のグルーヴボックス」になら、2026年の魂を砕くような高騰価格でも喜んで払う。「小さくていいから画面は付けてほしいが」。