これは要らない

Bad Gear - I don't WANT THIS!!!

この回の結論

驚くほど保守的な楽器で、機能は十分、音質は完璧、そして意匠はシンセ愛好家に物体愛か反ヒップスター感情のどちらか(時に両方)を確実に呼び起こす。過剰に最適化された UI のおかげで複雑なパターンと構成が作れる。音色もプリセットも当たり障りがない。OP-1 に向けられた批判の多く、いや、ほぼ全てが丁寧に対処されている。「そして、機材にこれほど退屈させられたのは本当に久しぶりだ」。

何を喋っているか

  1. 「世界で最も嫌われているオーディオツールを扱う番組、Bad Gear へようこそ」。Teenage Engineering は素晴らしい会社だ、と切り出す。「シンセ界で最も信頼できる炎上請負人であるだけでなく、
  2. 金を使う気がまったく起きない高すぎる音楽玩具を作る、数少ないメーカーの一つでもあるからだ」。今日は OP-XY。「そして自分は今も『これは要らない』と自分に言い聞かせるのに、かなり成功している」。一見して、TE が AI で宣伝映像を作ったのか、それともスウェーデン人のパーティーがこういうものなのか、判別がつかない。
  3. 「ゴス少年のための OP-1」。兄弟機のモノティンバー+ポータスタジオという恐ろしい思想を捨て、16本×64ステップのシーケンサー・トラックを採用。うち8本は、牛(=OP-1 の音源のネタ)を100%含まないマルチティンバーの音源に直接送れる。豊かなパッド生成器、
  4. 期待外れの生ぬるい風のような音、芸術家気取りのノイズ、そしてもう少し普通の音色。それ以外はサンプリングで賄うことになるが、
  5. 現代の MPC のような深さは期待しないこと。特にマルチサンプルの作り方については。ドラム系の音はほぼ全体設定でやり繰りすることになる。基本的なエンベロープ、フィルター、モジュレーション設定と、側面にピッチベンド用のパッド。
  6. サンプリング時間は20秒まで。「今のあなたの筆の詰まりは、内蔵アルペジエーターの前では無力だ」。合計24音のポリフォニーは制約になり得る。シーケンサーは扱いやすく、モーション録音やパラメーターロックといった現代的な機能を備える。
  7. 面白くなるのは OP-Z を思わせるステップ・コンポーネントを組み込んでから。「加速度センサーによると思われるベロシティを吐き出す、カチカチとゲーミングキーボードのようなボタン」に合わせて、ダイナミクスやラチェットを組める。
  8. さらにランプ、ベンド、ステップごとのランダム化で味を足せる。「これらのトラックでできる基本的なジャムと構成の技法には、自分はまだ慣れていない」。それだけでも十分立派なシーケンス機能に加えて、TE は補助トラックを用意した。高度な MIDI/CV 制御、独自のミキサーとフィルターを持つ外部音声の取り込み、
  9. そして2基の主要エフェクトの自動制御に使える専用レーン。エフェクトといえば、Pocket Operator 風のパンチイン・エフェクトが独自のシーケンサー・トラックを持ち、Ableton の Speed Repeat に似た効果のテープ・トラックもある。
  10. 補助トラック1は「brain」に割り当てられている。伴奏を作る機能で、「音楽理論に精通しすぎていて要らないか、あるいは自分のように、理解するには馬鹿すぎるかのどちらかだ」。ミキサーは素直で、演奏向きのEQ、サチュレーション、半自動のバス制御、簡単なコンプが付く。
  11. 既定では全部がミニジャック出力に送られる。USB-C でも音を出せるが、知る限りステレオのみ。マルチ出力は同期、CV、追加の音声出力、MIDI に使える。専用 MIDI 入力、Bluetooth MIDI、MIDI ホスト機能はありがたい。内蔵スピーカーと違って、内蔵マイクとライン入力は良い音がする。
  12. 内蔵電池は優秀で作りも完璧。「2300ドルという不条理な値札を考えれば、当然そうあるべきだ」。「OP-XY は、OP-1 field の大型アップデートか、有志のファームウェアであれば素晴らしかっただろう」。可処分所得の、上手な無駄遣いなのか。まずは説明書を読む前の段階でジャムを1本。
  13. 1本目のジャム。
  14. 「最高に刺激的なジャムではなかったが、OP-1 より演奏していて明らかに楽しかった」。内蔵音源は使えるが、発音の奪い合いを避けるためにボイス管理をいじる必要が出てくる。次はそれを回避して、XY から数台の「ミーム・シンセ」を鳴らす。
  15. 2本目。
  16. 「実に興味深い」。小さなトランシーバーと、くたびれた古い Boss のドラムマシンが、<b>XY では苦労して作らねばならない魅力と個性を、いとも簡単に出してくる</b>。ただしパッド機としてはかなり優秀。次はプラグインを通して、ソフトと同じくらい前に出せるかを試す。「あれをビーチに持っていくな。不動産価格を押し上げてしまうし、カクテルは季節ごとに薄くなっている」。
  17. 3本目。
  18. 結論。「OP-XY は驚くほど保守的な楽器で、機能は十分、音質は完璧、そして意匠はシンセ愛好家に物体愛か反ヒップスター感情のどちらか——時に両方——を確実に呼び起こす」。過剰なまでに最適化された UI のおかげで複雑なパターンと構成が作れる。音色もプリセットも当たり障りがない。OP-1 への批判の多く、いやほぼ全てが丁寧に対処されている。<b>「そして、機材にこれほど退屈させられたのは本当に久しぶりだ」</b>。
  19. 締めの畳みかけ。「Teenage Engineering は Casio VL-1 の精神と Game & Watch の美学を21世紀に持ち込み、モジュラー・シンセシスをさらに無用の長物にし、『チャイルド・プレイ』の真の後継作を世に出し、文化の盗用を再びかっこいいものにした。<b>そして今回、ワークステーションのジェントリフィケーションに成功した。</b>」